相関関係と因果関係

今回も中室牧子氏の投稿から考えたことです。中室氏は、現在慶應義塾大学の准教授であり、著書に「学力の経済学」がある教育経済学者です。日本ではあまり教育問題を経済学的な分析をしてこなかった背景があり、教育問題については、一部の評論家や子育てがたまたまうまくいった人が論じてきていました。私は、36年間義務教育に携わりましたが、教育に対しては国も教育委員会、現場の学校もこれといった確実な指針が出ていなかったという思いがあります。

相関関係と因果関係、これは教育でも整理しなければならないことです。相関関係は、2つの事柄に似た傾向があるもので、因果関係は2つが原因と結果の関係にあることです。ここでは、「スマホを使うと学力が下がる?」について中室氏の投稿から具体的に考えてみます。

「スマートフォンを使うと子どもの学力が低下する」そんな言説を最近耳にします。鵜呑みにしがちですが、実はこれは因果関係が実証できていない主張です。スマホの使用と学力低下との間に因果関係があるならば、スマホの使用をやめれば学力が上がることになります。しかしそのことは実証されていません。因果関係の実証法にはいろいろありますが、初心者にも覚えてほしい思考方法が下記です。もし「原因」となる〇〇がなかったらを考えてみる。具体的には、スマホを取り上げたら、子どもはどうすると思いますか。空いた時間に勉強するとは限らないことが想像できます。テレビゲームや友達との遊びなどに時間を使うかもしれませんし、スマホ以外の端末でインターネットを接続するかもしれません。一般的には因果関係を疑う際に次の3つの視点が大事になります。①「全くの偶然ではないか」と疑うこと。本来関係ないものを繋げているのではないか。②「逆の因果関係があるのでは」と疑うこと。原因だと思っていたことが実は結果かもしれません。③「交絡因子」があるのではないかと考える。交絡因子とは、原因にも結果にも影響を及ぼす第3の変数のことです。スマホそのものが原因ではなく、「家庭環境」が交絡因子となっていて、家庭環境の良しあしが学力低下にもスマホへの依存にも影響を与えているかもしれません。

最も有力な因果関係検証法として「ランダム化比較実験(RCT)」があります。RCTではまず1つの母集団を2つに無作為に振り分け、このうち片方を「原因がなかったら」という反事実を想定した(対照群)とし、もう片方を「原因」を施したグループ(処理群)として、両者の差を比較します。因果関係があれば、処理群と対照群では結果に明白な差が表れるはずです。最近では、民間企業でもRCTの考え方を取り入れています。RCTの他にもやり方はありますが、これらの問題はやはり専門家とのパートナーシップを組み相談しながら行うことが重要です。

教育問題も経済学的視点で考える時代がきています。経験や成功事例だけで考えることはやめていかなければなりません。

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